Rust and Hall(2003)“Middlemen versus Market Makers”

マーケットメイカーとミドルマン

 この論文では、マーケットメイカーとミドルマンという二種類の仲介業者が登場します。ここでミドルマンとは売買値を個別交渉で決定する仲介業者です。マーケットメイカーの売買値は彼に出会う前に確認できますが、ミドルマンの売買値は彼に出会うまでわかりません。

 

マーケットメイカーとスチール市場

 マーケットメイカーが存在できる条件として以下の二つがほぼ常識であると、RustとHallは述べました。一つは、財が標準化されていること(財が同質財、という意味だと思われる)、そしてもう一つは、財の取引量が十分大きく、厚くて活発な市場が形成されていることです。しかしRustとHallはスチール市場に注目し、以下を指摘しました。まずスチール市場は上述の条件を満たしているにもかかわらずマーケットメイカーが存在しない。そして過去に相当数の企業が、マーケットメイカーとしてスチール市場へ参入したが、ことごとく撤退していることです。

 

問題提起

 Rust and Hall(2003)は次の二つの問題提起を行いました。

 まずRust and Hall(2003)はキャンター・フィッツジェラルド社に注目します。彼らは、スチール市場と債権市場に参入を過去に試みました。そのいずれもマーケットメイカーとして参入を試みました。そしてその結果、スチール市場では参入に失敗し債権市場では参入に成功しました。それはなぜか?

 つぎにRust and Hall(2003)はミドルマンが存在する市場にマーケットメイカーが参入する状況を考えます。マーケットメイカーは売買値を公示する。ここでミドルマンが、売値をマーケットメイカーより少し低く、買値をマーケットメイカーよち少し高く設定したとする。もしトレーダーが探索に慣れていれば、ミドルマンはマーケットメイカーから仕事を奪うことができると考えます。しかしキャンター・フィッツジェラルド社は、ミドルマンが存在する債権市場にマーケットメイカーとして参入することに成功しました。それはなぜか?

 

モデル

 この論文のモデルで、まず売手と買手がプレイヤーとなり取引を試みます。また探索市場では必ずミドルマンを介して取引が行われます。プレイヤーは探索市場に参加してミドルマンと取引するか、参加せず独占的マーケットメイカーと取引するかを選びます。

 

結果と議論

 Rust and Hall(2003)は、マーケットメイカーの取引コストと、最も取引コストの小さいミドルマンの取引コストの二つの値によって、以下の三つが起こりうることを示しました。それは①独占的マーケットメイカーが探索市場を完全にのみこむ経済、②独占的マーケットメイカーと探索市場が共存する経済、③独占的マーケットメイカーが参入できない経済、の三つです。

 

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